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インターネットにおける商標権侵害の訴訟案件

権利侵害者所得の商標権侵害訴訟における重要な地位

中国法律の規定に基づき、商標の権利侵害賠償数・金額はライセンサー(権利者)の損失、権利侵害者の所得、許可費の倍数、懲罰性賠償、法定賠償に基づき確定する。市場の要因などが影響し事情が複雑で処理が難しい場合、製品自体の耐用年数、ライセンサーの広告投入、財務状況、市場戦略、同業ライバルの成長状況などが製品販売量に影響する可能性があり、ライセンサーが基本的に商標権利侵害による損失を証明できない場合、裁判所側も賠償数・金額を確定することができない。従来の商標の権利侵害案件のうち、財務情報は権利侵害者の内部で把握され、ライセンサーも権利侵害者の所得証明が困難であるが、インターネットの発展に伴い、権利侵害者は通常ネットワークを経た製品販売あるいは関連宣伝を行っているため、ネットワーク上で権利侵害製品の販売数の証拠が保留される。この場合、権利侵害者の利潤と業界の利潤を合わせて、権利侵害者の所得の確定補助が可能となる。権利侵害者の所得を確定した状況において、ライセンサーは権利侵害者に明らかな主観的悪意があると証明し、懲罰性の賠償を主張できる場合、ライセンサーは権利侵害所得の3倍の賠償責任を請求することができる。このほか、法定賠償は司法の実践の中で最もよくある賠償方式である。この種の計算方法は権利侵害行為の性質、期間、引き起った結果、商標の信用名誉、商標使用許可費の金額などの要因などを裁判官が検討要因として総合し、実際に、権利侵害者の所得情報にも関係する。このため、権利侵害者所得の証明はライセンサーが理想的な賠償額を獲得できるかの重要ポイントとなる。

権利侵害者の所得確定の法的根拠と難点

「最高人民法院(最高人民裁判所) 商標民事紛争案件の審理に適用する法律の若干問題に関する解釈」(2002年)第14条の規定に基づく。商標法第56条第1項目で規定する権利侵害で獲得した利益は、権利侵害商品の販売量と当該商品の単位あたりの利潤の積により計算することができる。当該商品の単位あたりの利潤が調査で明らかにできなかった場合、登録商標商品の単位あたりの利潤で計算する。当該条項の規定から権利侵害者の所得を確定する計算方法は「権利侵害者の所得=権利侵害商品の販売数×登録商品の単位あたりの利潤」とする。当該方法を適用した賠償額の確定には2つの難点がある。すなわち、権利侵害商品の販売数の証明と商品の単位あたりの利潤の証明である。

訴訟中の原告による初期段階における権利侵害所得証明の提示方法

(1)権利侵害者の商品販売数の証拠提示

上記のとおり、権利侵害者の製品販売数は権利侵害者の内部で把握されているため、ライセンサーは商品に相応する販売数の証拠獲得が難しい。しかし、インターネット環境において、多くの権利侵害者は電子商取引(Eコマース)サイト上で権利侵害製品を販売し、これらの電子商取引サイトにおいて、権利侵害製品の販売数の手がかりを探し出すこともできる。

1)電子商取引サイトでの製品販売ページ画面の製品基本情報。某電子商取引サイト上には、製品ページ画面において製品の販売価格xxx元、権利侵害製品の販売済み数量xxx個とあり、このとき、販売数量と価格を合わせて権利侵害製品の販売数・金額を獲得することができる。ある製品のページ画面には、販売総数が提示されていないが、月間販売数xxx個と提示されている。このためこれと同時に、権利侵害画面上で権利侵害製品の販売開始期日があるかどうかに注意し、画面上に権利侵害製品の販売開始日があれば、月間販売数と販売期間(月)の積により、販売収入の確定が可能である。製品ページ画面の中に直接権利侵害製品の販売開始日が提示されていない場合、ユーザー評価の最早期日により権利侵害商品の販売日を確定することができ、月販売量と販売期間(月)の積で販売収入を確定することができる。

電子商取引サイトの中で製品ページ画面に製品の販売総数あるいは月間販売量が提示されていない場合、製品の販売数・金額の確定は更に複雑になる。しかし、ほとんどの電子商取引サイトにおいて製品ページ画面に製品の販売価格と製品のユーザー評価数が提示されているため、ユーザー評価の数量により販売数を確定できるが、この方法の適用は当該電子商取引サイトの「ユーザー評価規則」により、ユーザー評価の最終提示が電子商取引上での条件が何かを定め、特に、ユーザーが購入後評価を行ったかどうか、ユーザーの返品後の評価が削除されているかどうかなど、権利侵害証拠の固定と同時に「ユーザー評価規則」の同一固定を行わなければならない。

2)企業の対外宣伝情報。企業によっては自社の市場影響力を証明し、連携企業の誘致、人材募集など、往々にしてそのオフィシャルサイト、求人情報、広告或いは認証を経たウィーチャット(微信)パブリックナンバー、ミニブログ(微博)などの個人の媒体において企業の生産能力と営業額などを対外宣伝している。これらの証拠は裁判所で権利侵害所得を確定する参考になりうる。例えば、北京高等裁判所は王暁亮、北京秀潔新興建材有限責任公司と美巣集団股份公司(建築内装材)の商標権の権利侵害紛争[1]案件において、以下の判決を下した。

「一般状況において、市場の経営主体の対外宣伝で明確に記載した企業自体の状況に対して損害賠償の単一認定の根拠とすることは適さないが、ライセンサーが証拠提示に尽力し、権利侵害者が正当な理由がなく裁判所にその関連帳簿、材料の提出を命じたが提出しなかった状況において、ライセンサーの証拠提示の負担軽減、知的財産権の保護力拡大、企業環境の信頼づくりの角度から、案件関連の権利侵害者の対外宣伝で明示した内容を権利侵害者が権利侵害行為の権利獲得のための参考とすることができるとした。」

3)第三者の決済サイトの流れ。インターネットでの販売は第三者サイトのオンライン決済を付随し、個人による相応のデータの獲得ができない状況において、ライセンサーは「民事訴訟法」第64条第2項と「最高人民法院 民事訴訟証拠に関する若干規定」第3条第2項の規定に基づき、人民法院の第三者決済プラットフォーム(アリペイなど)において権利侵害者の相応の販売収入の調査を請求する。例えば、大手スポーツブランドFILAの中遠鞋業有限公司などを起訴した商標権利侵害案件[2]のうち、被告は京東(JD)、タオバオ(淘宝)、Tモール(天猫)などの電子商取引サイト上で商標権を侵害し原告のシューズを販売し、原告は一審の裁判所に申請し被告の京東、Tモール、タオバオ上での販売記録とアカウントの明細を取り調べ、被告の権利侵害数・金額を証明し、最終的に両社は権利侵害商品の販売額16,201,275.8元(販売数×権利侵害商品の単価)を認め、当該数・金額は裁判所で認められた。

(2)権利侵害商品の単位あたりの利潤確定

単位あたりの製品利潤は製品の生産コスト、販売コストなどに及び、権利侵害商品の単位あたりの利潤の確定は権利侵害者の所得の証拠を提出するもう一つの難点である。権利侵害者のその財務の帳簿未提出の状況において、ライセンサーは基本的に権利侵害製品の単位あたりの利潤を確定できない。

公式行政部門が発表した業界平均利潤は、当該業界の平均利潤レベルに反応しているが、公式行政部門側の発表は高い証明効力を備え、裁判所で信用を得やすい。例えば、中国港中旅集団公司(CTS)の権利侵害案件[3]において、裁判所は国家旅游局(観光局)の公式サイトで発表した「国家旅游局 2012年度全国旅行会社統計調査状況に関する公報」、「国家旅游局 2013年度全国旅行会社統計調査状況に関する公報」に記載されている全国旅行会社観光業務収入、旅行業務利潤に基づき、国家観光局公式サイトで公開された業界利潤率の計算方式(年度観光業務利潤と年度観光業務営業収入の除算)により、全国旅行会社の平均利潤を計算し、張家界中港国際旅行社の実際経営において提出されなかった実際利潤関連証拠を全国旅行会社の平均利潤率により経営利潤を確定した。

このほか、業界協会は1つの産業・企業の連合からなる独立した非営利組織として、本産業の具体的な理解に対して、その提供した本業界の平均利潤は高い信頼度を備え、権利侵害者所得の確定に対して重要な作用をもつ。例えば、FILAの中遠鞋業などを訴訟した商標の権利侵害案件において、被告は二審において瑞安市鞋革行業協会が発行した「夏季平底フラットヒールレジャー薄底帆布シューズのコスト価格証明」を提出し、夏用普通平底フラットヒールレジャー薄底帆布シューズのコストは1足あたり20.35元と明記されていた。裁判所では中遠鞋業は瑞安市鞋革行業協会のメンバーであると判断し、当該協会が公開した当該帆布シューズのコストを中遠鞋業の生産、販売で権利侵害商品をコントロールされたコスト価格の参考とし、FILAの一審審理で提出した証拠に基づき、中遠鞋業の京東、タオバオ上で販売した各種販売価格は35~69元と証明され、裁判所では最低価格の35元を採用し、最終的に権利侵害された商品1足あたりの販売利潤率は少なくとも41.83%と認定し、今回の利潤に対して、権利侵害賠償数・金額を計算した。

結論

従来の商標権利侵害訴訟において、証拠提示の困難は、賠償額の低さを引き起こし、インターネットの発展に伴い、ライセンサーの証拠提示はより多くの可能性を提供した。このため、インターネット情報の検索により、理想的な賠償獲得に期待する。

参考資料:

[1](2017)京民終335号

[2](2017)京73民終1991号

[3](2015)湘高法民三終字第4号